第1回 グリニッジのこと
みなさんはじめまして。「倫敦の人」どうぞよろしくお願い致します。ごあいさつにも書かせていただきましたが、私は今年の9月からロンドンで暮らしています。ロンドンは現在、コロナ患者数が再び急上昇し、ローカルロックダウン状態となっています。それでも、ロンドンの生活はめっちゃ楽しい! なぜかというと、私の住んでいるグリニッジという街が素晴らしすぎるからです。というわけで、1回目はグリニッジについて、ご紹介させていただければと思います。
東京に隅田川があるように、ロンドンにはテムズ川が流れています。グリニッジはこのテムズ川を、ビッグ・ベンなどのあるロンドンの中心地から少し下流に下ったところにあります。東京にとっての横浜みたいなイメージでしょうか。ご存知のとおり、グリニッジといえばグリニッジ天文台。経度0度、本初子午線が通り、グリニッジ標準時がここに定められています。
グリニッジ天文台は1675年にイングランド国王チャールズ2世によって、経度の計測のために作られました。1851年、天文台長のジョージ・ビドル・エアリーがグリニッジ子午線の基準となる子午環を設置。84年には、国際会議によってこのグリニッジ子午線が世界標準、すなわち本初子午線となりました。正確な経度の計測は、安全な航海に不可欠です。世界をリードするイギリスの観測技術が、この国を七つの海を支配する大英帝国に押し上げる基礎となったといえるでしょう。
それを示すように、グリニッジは海軍と海洋貿易と深く結びつています。天文台はテムズ川を望む丘の上にあるのですが、そのふもとには王立海軍兵学校がありました。その壮麗な建物は現在も保存され、一部を見学することができます。またグリニッジに隣接するデットファッドという街にはかつて、アジア貿易を支配したイギリス東インド会社と海軍、二つの巨大な造船所がありました。
ちょっと堅苦しいことばかり書いてしまいましたが、グリニッジ天文台は王立公園であるグリニッジ・パークの中にあります。この公園、本当に素敵です。私は、ここを通り抜けて大学や買い物に行っているのですが、毎日訪れても飽きません。くまなく歩こうと思うと1時間以上はかかってしまう広さで、天文台以外にも様々なものがあります。水鳥が泳ぐ池、フラワーガーデン、絵本に出てきそうなバラ園、女王のオークと呼ばれる古代のオークの木。そしてロンドンの街を一望することもできます。その夜景はちょっとびっくりするくらいきれいです。
グリニッジはまだまだ見所がいっぱいありまして、今後も随時報告せていただければと思います。海外旅行がまた気軽にできるようになったら、みなさんにはぜひグリニッジを見ていただきたいです。
松井美緒
出版社で漫画編集を務めたのち、フリーランスの編集・ライターに。インタビュー、本・漫画のレビューをはじめ、さまざまなジャンルの記事を執筆。
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