Interviews | File No.6
田中範央さん
Q1. はじめて檸檬の実を訪れたきっかけとそのときの印象は?
「きっかけ」は、この記事のインタビュアであり、ちぎり絵アーティスト兼ライターの渡辺えみさんのお誘いを受けたことです。
ちぎり絵のモデルになるのは気恥ずかしく気おくれしましたが、モデルになると、「檸檬の実」でおいしいものを食べられると聞き、このところ、食欲が減退し疲れ気味だったので、美味と元気をいただこうと、お引き受けしました。
「印象」は、はじめてなのにはじめてではなく、ずっと前からの知り合いのように迎え入れられ、親しみやすく、とても居心地がよかったです。
美味しいものを食べられる店って、外観を目にし、ドアを開けた瞬間にわかるもので(そうではないですか?)、「檸檬の実」も一瞬にして、間違いない、来てよかったと思いました(お世辞でなく)。
Q2. 檸檬の実で食べたいメニューは?
サンドイッチ系のパンか生姜焼き。
Q3. これからの檸檬の実に期待していることは?
こちらのリクエストはQ2の答え通り、「サンドイッチ系のパンか生姜焼き」。
どっちかに絞れよ! というリクエストでしたが、出てきたのは、まさかまさかのバンズに生姜焼きが挟まった、ふたつのリクエストに応えたもの(驚きと感激、そして感動)。
しかも、バンズはターメリックが練り込まれたカレー風味で、ふたつの好きなもの(パンと生姜焼き)にさらに好きなもの(カレー)が加わり、とんでもなく贅沢で、なんだか、いけなくてズルいことをしている気にもなりました(それくらい美味しかったです)。
そして、その付け合わせが、なんとザーサイ!
パンとザーサイ、生姜焼きとザーサイ、という取り合わせは、50年以上生きてきて、はじめて目にし、食べましたが、「前世から結ばれることになっていた」としか思えないくらい、パンと生姜焼きとザーサイの相性は良く、実にぴったり!でした。
「檸檬の実」に期待したいのは、毎回でなくて良いから、このようなサプライズや発見があること。
それから、前菜でいただいた野菜の美味しさや、箸休めの鶏のスープのやさしい味のように、「檸檬の実」に行けば必ずいただけ、期待を裏切らない「美味しさ」と「やさしい味」に出会えることでしょうか。
Q4. あなたが大事にしていることは?(人生、食、人との関係etc…)
大事にしているけど、大事にできているかわからないことやモノを、思いつくまま挙げていくと……言葉、本、映画、音楽、絵、ユーモア、想像力、健康(笑)、そして衣食住、とりわけ食べること、食べないと生きていけないから。
田中範央さんのファンタジーワールド
~取材おまけエッセイ~
たべる人6回目は、「これまで一度も檸檬の実へいらしたことのない人をお招きしてみたい案」が採用され、私が20代の頃にアルバイトをしていた出版社の先輩・田中範央さんをゲストにお迎えしました。
範央さんは、多忙な時期ということもあってお疲れで、食欲も減退気味とのことで心配でしたが、リクエストメニューは、「サンドイッチ系のパンか生姜焼き」。
生姜焼きを食べたいと思えるならば、まだ元気は残っているだろうなと少し安心しました。
当日のメインメニューは、生姜焼きバーガー。
イダさん、ナイスアイディアです!
生姜焼きの味つけにはメープルシロップが使われていて、その甘味とターメリックパンとのくみあわせが抜群!
範央さんも、「リクエストをふたつとも叶えてもらえ、ビストロスマップのゲストになった気分!」と歓喜。例えが平成!
前菜のパクチーとナスのチリパウダーマリネは、香り、食感ともに良く、イダさん、こういうの、よく思いつくなあと、いつも思います。
他にも、お疲れの人にもってこいの、ねぎたっぷりのあったかい鶏だしのスープや、バナナケーキとロールケーキまで出していただき、大満足!
むしゃむしゃ食の進んでいた範央さんのご様子に、お招きして良かったなとホッとしました。
一週間ほど経って、範央さんから、「イダさんにぜひお伝えしてほしい」とご連絡あり。
「『檸檬の実』で食事したあと、減退気味だった食欲は底を打ち、V字回復しました。『檸檬の実』のごはんには、元気の素があり、マジカルなスパイスがふりかかっていた!」とのこと。
私もヘトヘトで檸檬の実に行って、ごはんを食べて元気になったことが何度もあるのでよくわかります。
スパイスやハーブの効果なのか、イダさんの手から込められるエネルギーによるものなのか、檸檬の実の料理には、疲れた人の心を癒す力があるのよねぇと、あらためて感じ入りました。
にがおちぎり絵を作成中、前から知っている範央さんではありますが、へえ、こんな目をされているんだなあと発見がありました。
右目は物事の本質を凝視している感じが強く、左目からは好奇心や人と関わろうとする積極性、おもしろがる精神のようなものを感じました。
会社での範央さんは、周りの状況に左右されず、自分のやるべきことにいつだって没頭していて、その姿は少々浮世離れしているように私には見えていました。
おもしろい本を作りたいという情熱、いわば本を作るという魔法にかかり続けていられることが、範央さんの最大の魅力であり、強さであるように思います。
それらの印象一切合切ひっくるめて、ファンタジーワールドをイメージしました。
たべる人 田中範央さん
1966年生まれ(誕生日はコペルニクスとカーソン・マッカラーズと同じ日)。
小説を中心に単行本の編集を(気づいてみたら)20年以上も、しています。
構成・ちぎり絵:渡辺えみ
https://emiwatanabe.com