Interviews | File No.9
伊藤幸人さん
Q1. はじめて檸檬の実を訪れたきっかけとそのときの印象は?
ひと言で言って、「憩いの街の食堂」という印象です。
「檸檬の実」が何よりも素晴らしいのは、地元「谷根千」にしっくりととても自然に溶け込んでいるところですね。
お店の中の空気がとてもいい(美味しい)気がしました。
そこだけに独自の時間がゆったりと流れていて、慌ただしくなく、大都会のど真ん中にあるお店とはとても思えません。
私のように昭和生まれ育ち人間からすると、懐かしさで心がいっぱいに満たされます。
Q2. 檸檬の実で食べたいメニューは?
お食事では「お魚料理」を希望させていただいたのですが、メインは、蒸した太刀魚に柔らかいマッシュポテトを合わせた絶品料理。
お店の名前にちなんで、どこかに「檸檬」を使っていただきたいと希望したのですが、太刀魚のお料理の香りづけに隠し味として「檸檬」を使ってくださり、爽やかな味が引き立っていました。
付け合わせのミョウガとマスカットを合わせたものも、その意外な組み合わせに驚きましたが、実に美味しかったです。
お味噌汁も塩味控えめであっさりしていて、飲みやすかった。
そして最後は、土鍋で炊いたというご飯。粒がたっていて、とても味わい深かったです。
ともあれ、「檸檬の実」さんのランチの魅力は、「体が喜ぶ美味しい料理」ということに尽きます。
Q3. これからの檸檬の実に期待していることは?
お料理は、その時々の素材などで変化していくでしょうが、この空間の雰囲気は今後も持続していって下さることを心から願っています。
Q4. あなたが大事にしていることは?(人生、食、人との関係etc…)
私が人生で最も大事にしていることは、まずは健康です。心身ともに健康でないと、どうしても人生を楽しめませんからね。
そして第二に、周りの人々との「心地よい関係」です。
それには、「自分に厳しく、他人に優しく」の精神が大事と思っています。
「自分に厳しく、他人に優しく」とは司馬遼太郎先生の言葉ですが、なかなか実行は難しく、自分で出来ている自信はありません。
しかし、何とかそうありたいと思っています。
第三に、幾つになっても勉強を怠らないようにしたいと思っています。
いまも錆びついた英語を磨き直そうとあがいています。
伊藤幸人さんのファンタジーワールド
~取材おまけエッセイ~
前回の更新から、だいぶ月日が経ってしまいました。
夏から秋にかけて、ちぎり絵展やイベントを開催していたため、なかなか時間がとれずにいました。
楽しみに待っていてくださったみなさま、ありがとうございます。
さあ、お待たせいたしました!!
今回はFile.6に続き、初めて檸檬の実のお料理をたべる方がゲストです。
お招きしたのは、私が20代の頃にアルバイトをしていた出版社の上司・伊藤幸人さんです。
当時、面接官だった伊藤さんに採用していただいたことで、それまでの演劇人生から出版社での学びの日々に進むことができました。
お世話になったご恩返しのひとつとして、にがおちぎり絵をお作りし、私の尊敬するイダさんのお料理をめしあがっていただきたく、声をかけさせていただきました。
会食日は、たまたま他にお客様がおらず、おひさしぶりにのんびりとお話しをすることができました。
伊藤さんリクエストの「お魚料理」は、グルッと巻かれた太刀魚が登場しました。
太刀魚の下にはマッシュポテト! 蒸した太刀魚の風味とやわらかさ、マッシュポテトのくみあわせ、削った檸檬の皮がパラパラと散らされていて、味も見た目も感服です。
梨とタコとハヤトウリの和え物にはイチヂクと白味噌のソースがかかっていて、食感もおもしろく、さすがの仕上がり。
輪切りのマスカットとミョウガの和え物もたまげたものです。
それぞれの爽やかな香りを想像してみてください。遠くの方にどこか共通する香りがありませんか?
イダさんは、なぜにこうしたくみあわせが思いつくのでしょうか。嗅覚が良すぎます。
味噌汁は、四方竹と細かく刻んだ根三つ葉入り。この食感がとてもいいのです。隅々まで工夫が凝らされていて唸りました。
デザートは紅玉とバニラアイス、キルシュを使ったゼリーがのっていました。
他にサツマイモの茶巾や漬け物もあって全体的には和風なのですが、イダさんの創作力が炸裂していて和を飛び越えていました。
伊藤さんにも檸檬の実の空間とお料理をご堪能いただけたようで、まるで親孝行(?)ができたかのようなホカホカした気持ちを私がいただいていました。
さて、伊藤さんのにがおちぎり絵について。
にがおちぎり絵を作っているときに最も注目するのは目です。
伊藤さんの左目は、目の前の事柄をギロッと冷静に見据えている印象、右目からは無常なものを深く憐れんでいる印象を受けました。目に光があり、活力を感じます。
私独自の解釈ですが、お人柄の一端を見させていただいた思いです。
昔からお世話になっている方であっても、実はお顔のパーツをじっくり拝見したことはなく、相手のことを知っているようでまったく知らないものだなと気づかされます。
そして、伊藤さんのファンタジーワールド(=その人のサブタイトル)は、黙々と言葉少なに硬いものを作り、なにか起きたときは、物凄い力で制する神話的な人物のイメージが湧きました。
伊藤さん、ご登場いただきまして、ありがとうございました。
おや? またご恩ができてしまいました。
たべる人 伊藤幸人さん
某出版社取締役。出版不況と戦う営業担当にして、広報担当。でも、自分としては「生涯一編集者」であると思っています。
好きなものは、ハワイの風とカリフォルニア・ワイン、そしてゴルフ(下手ですが)。
構成・ちぎり絵:渡辺えみ
https://emiwatanabe.com